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すきなひとすきなことすきなときすきにかく

ぼくの靴音

ぼくの靴音


ゆっくりとゆっくりと読み進めてきた。
ワタシにたくさんの言葉を使いこなす術があったなら、
この世界は、ワタシの作り出した世界なのかもしれないと、
勘違いしてしまったかもしれない。


それくらい、同じ痛みを感じた。


ワタシが、今、どうしようもなく彼を慕っているのは、
その痛み故なんだろう。
自分と同じ痛みを知っている人が表現者であって良かった。
隠さないで、その時のことを記してくれて良かった。


ワタシはいつも何かに脅えていて、
ささくれ立った心を抱きしめながらここに居る。
人の優しさはもちろん理解出来るし、
人にはいつでも優しくなりたいと思っている。
でも、それが上手に出来ない不器用さ。


言葉すら簡単には出てこない。
たった一つの言葉が人を傷つけてしまうから。


傷つきたくないし、傷つけたくないのが本音。


だから殻にこもってしまう。
ひとりでいることを望んでしまう。


そして、寂しくて寂しくて涙が出てしまうんだ。


そんな一滴の涙を彼はやんわりと受け入れてくれる。
きっと。
そして、その涙をそっとなぞってくれるんだ。


やわらかくてやさしくていとしい気持ち。
ここに確かに在る。